シューベルト:交響曲第7番ロ短調 D.759「未完成」第二楽章
ー今週のテーマはシューベルトとその周辺。
ー「未完成」第二楽章の、劇的な場面を伴いつつ平安な世界の意味。
【「未完成」と「美しき水車小屋の娘」との関係、そして未完成で終わった理由】
「この時期のいくつかの歌曲にロ短調で刻まれる不安と孤独の鼓動が《未完成交響曲》の冒頭に酷似し、究極的な光の楽園はしばしばホ長調の五音音階によって歌われる、ということである。──そう、第2楽章(ホ長調)の冒頭、ホルンの呼びかけに乗って弦楽が奏でる五音音階のそよぎは、《美しい水車屋の娘》(1823年)の終曲で小川が若者を包みこむ永遠の安らぎの歌であり、死の前年にいたってなお《冬の旅》の〈菩提樹〉が「ここにお前の憩いがあるよ」と囁(ささや)きかける声なのである。
つまり、第2楽章で光と平安に満ちた天上世界を描ききってしまったシューベルトには、その先を続ける内的な動機がもはや残されていなかった。《未完成》が第3楽章で放棄された理由はこの点に求められよう。」堀 朋平
古典的な均衡(モーツァルト)も前進するエネルギー(ベートーヴェン)もなく、このシューベルトは、過ぎ去りゆく懐かしい世界へのロマン的憧憬を感じさせる。

 演奏は、リッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィルハーモニー。