R・シュトラウス:ドン・キホーテ
ー今週のテーマは、チョン・ミョンフンとドヴォルザーク。
ードヴォルザークの間にちょっとR・シュトラウス。
 交響詩『ドン・キホーテ』(Don Quixote )作品35は、1897年に書かれたリヒャルト・シュトラウスの管弦楽作品。副題を「大管弦楽のための騎士的な性格の主題による幻想的変奏曲」(Phantastische Variationen über ein Thema ritterlichen Charakters )といい、セルバンテスの小説『ドン・キホーテ』に基づいて書かれた。
卓抜した管弦楽法と共に、独奏チェロ・独奏ヴィオラが活躍することでも有名で、それぞれ主人公のドン・キホーテと従者のサンチョ・パンサの役を演じている。
 
序奏   ラ・マンチャの村に住む男が騎士道の本を読んで妄想にふけり、自分が騎士ドン・キホーテであると思い込んでいく。
主題   ドン・キホーテは従者サンチョ・パンサを引き連れ、冒険に出る。ドン・キホーテの主題が独奏チェロで、サンチョ・パンサの主題が独奏ヴィオラで奏される。
第1変奏 ドン・キホーテは風車を巨人と思い込んで戦いを挑むが、風で風車が回り、地面に叩き付けられてしまう。風は弦楽器のトリルで表現される。
第2変奏 ドン・キホーテは羊の群れを敵と勘違いして蹴散らす。羊は金管楽器のフラッター奏法で示される。
第3変奏 冒険が嫌になったサンチョ・パンサとドン・キホーテが言い合いをする。独奏チェロ・独奏ヴィオラの聴きどころである。
第4変奏 ドン・キホーテは、懺悔者の一行が携える聖像を誘拐された貴婦人だと思い込み、助け出そうとして一行に突入するが、叩き付けられて失神してしまう。
第5変奏 ドン・キホーテは、架空の恋人ドルシネア姫への思いに耽る。
第6変奏 ドン・キホーテは、通りかかった不器量な田舎娘をドルシネア姫だと信じ込むが、娘は気味悪がって逃げてしまう。
第7変奏 女たちにからかわれ、だまされて目隠しをしたドン・キホーテとサンチョ・パンサは、乗せられた木馬を魔法の馬だと信じて、巨人退治に夢中になる。ウィンドマシーンによって架空の飛行が奏される聴き所である。持続低音が、実際は地面に止まったままであることを表している。
第8変奏 川岸で櫂のない小舟を見つけた2人は、それに乗って囚われの王子を救出に向かうが、水車に巻き込まれて転覆し、ずぶぬれになってしまう。滴る水を弦楽器のピッツィカートが表現している。
第9変奏 ドン・キホーテは2人の修行僧(2本のファゴット)を悪魔と勘違いして襲いかかる。驚いて修行僧たちは逃げるが、ドン・キホーテとサンチョ・パンサは意気揚々と旅を続ける。
第10変奏 ドン・キホーテを妄想癖から治そうと、彼の友人カルラスコが騎士に扮して、決闘を挑む(トランペットで表現される)。ドン・キホーテはついに冒険をあきらめ、寂しく村に帰る。
終曲
ドン・キホーテは故郷の村で死の床にある。ドン・キホーテは静かに自分の生涯を回想する。チェロのグリッサンドによって彼の死が示される。