モンテヴェルディ:西風が戻り(Zefiro torna)「マドリガーレ集第6巻」より
ー今週のテーマは、春の兆しno.2ー弥生・蟄虫啓戸(蟄虫が戸を啓く)
モンテヴェルディが数多く作曲したマドリガーレの語源は「自国語で歌う歌」。教会で歌う歌はほとんどがラテン語だったので、
世俗的な内容は自国語で歌うことになった。つまり「自国語で歌う歌=世俗的な歌」で、人間の自由に感情表現の世界だ。
ルネッサンスの精神の体現といってもいいだろう。
 二重唱の名曲として知られる美しいマドリガーレ『西風が戻りて』。春の訪れを告げる西風の到来を歌っている。
Zefiro torna (西風が戻り) マドリガーレ集第6巻より 詩 ペトラルカ
Zefiro torna e’l bel tempo rimena 西風がもどり 素敵な季節が戻ってきて
e i fiori e l’herbe sua dolce famiglia 花や草 その愛らしい親族たちが
e garrir Progne e pianger Filomena プロクネ (つばめ) がさえずり フィロメナ (うぐいす) が鳴き
e primavera candida e vermiglia. 戻ってきた春は白と赤につつまれる。
Ridon i prati e’l ciel si rasserena 草原は微笑み 空は澄み渡る
Giove s’allegra di mirar sua famiglia ジュピター はじブナの娘を見つめてご機嫌だ
l’aria e l’acqua e la terra e d’amor piena 空気も水も大地も 愛に満ち
ogni animal d’amar si riconsiglia. すべての動物はふたたび愛を交わす。
Ma per me lasso, tornano i piu gravi だが 私には ああ!戻っただけだ 深い
sospiri che dal cor profundo tragge   ため息が 心の底から引き出された
quella ch’al ciel se ne porto le chiavi.  あのひとが天国へとこの鍵を持って行ってしまったから
e cantar augeletti e fiorir piagge それで小鳥の歌も花咲く野原も
e’n belle donne honeste atti soavi まごころのこもった美しい女性のやさしい行為も
sono un deserto e fere aspre a selvagge. 荒々しい下品な振舞いと少しも変わらないのだ。
歌唱はマグダレーナ・コジェナーとアンナ・プロハスカ。アンドレ・マルコンの指揮で、
オーケストラはバーゼルのバロック・オーケストラ「ラ・チェトラ」。