グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調 作品16
ー今週のテーマは、モーツァルトとヨーロッパの色彩。
ー今朝は北欧の色彩、グリーグのピアノ協奏曲!

 グリーグが完成させた唯一の協奏曲。1868年、作曲者25歳時にデンマークのセレレズを訪問中作曲された初期の傑作。
グリーグはその後出版社からの依頼を受け、1883年ごろに2番目のピアノ協奏曲を書こうとしたが書き上げられず、代わりにこの曲に何度も改訂を行っている。
現在演奏されるのはグリーグの最晩年である1906年から1907年頃改訂され、1917年に出版されたもの。初期版と曲想の大きな違いはないが、楽器編成が異なり、独奏と管弦楽譜で400か所以上の変更点が見られる。
グリーグはシューマンのピアノ協奏曲をライプツィヒ音楽院に留学していた1858年にクララ・シューマンの演奏で聴いていて、それに大きく影響を受けた。また1870年にグリーグと会見したリストが、彼の持ってきた手稿譜を初見で弾いて、第3楽章のある部分について「これが本当の北欧だ!」と絶賛したというエピソードがある。
第1楽章 Allegro molto moderato イ短調 4/4拍子 ソナタ形式
印象的なティンパニのクレッシェンドに導かれて登場する冒頭のピアノの流れ落ちるようなフレーズは、フィヨルドの注ぐ滝の流れを表現したものともいわれる。
第1主題は、オーボエからチェロに引き継がれる素朴な形で現れる。第2主題はいかにもグリーグらしい「静かに歌うような」旋律。ごく短い展開部は第1主題が扱われ、半音ずつ上昇させる形。管楽器が主題を演奏する後ろでピアノは分散和音で彩る。型どおりの再現部の後に、非常に長いカデンツァとなる。カデンツァの後に第1主題の一部を弦楽器が仄暗く奏で、Piu allegroのコーダに入る。コーダの最後でピアノが冒頭のフレーズを再現して終わる。
第2楽章 Adagio 変ニ長調 3/8拍子 複合三部形式
弱音器をつけた弦楽器が、柔らかい充実した和音の旋律を奏でる。第2部でようやく現れるピアノのパートは、この旋律を受け継ぎながら発展されるパッセージで、印象的的。第3部は、管弦楽に支えられたピアノが主題を強奏し、なごりを惜しむかのように、次第に静かに消えていく。
第3楽章 Allegro moderato molto e marcato イ短調 2/4拍子 ロンドソナタ形式
第2楽章からはアタッカによって繋がっている。前楽章とうってかわり、軽快だがやや大規模な楽章。中間部では独奏フルートが3連符を含む叙情的な第2主題を歌い上げる。終結部は、この第2主題を管弦楽とピアノで合奏し壮大な効果を上げる。

演奏は、ピアノがアリス=紗良・オット(Alice-Sara Ott、1988年8月 – )、トーマス・ダウスゴー指揮デンマーク放送交響楽団。アリス=紗良・オットは、ドイツ・ ミュンヘン出身のピアニストで、母親が日本人。