ドヴォルザーク:交響曲第8番ト長調op.88
ー今週のテーマは、チョン・ミョンフンとドヴォルザーク。
ーしなやかで芳醇なウィーンフィルで暖かい交響曲第8番を。
 1889年に完成したこの曲。「イギリス」と呼ばれるのは、ドイツ圏の出版者ジム・ロックではなく、イギリスのノヴェロから出版されることになったため。
 第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ ト長調 4/4拍子。ソナタ形式。
 意表をつくように、冒頭はト短調ではじまる。哀愁を帯びたチェロの主題がト長調の和音上で終止すると、やがてフルートが第1主題を奏ではじめる。
そこからヴィオラとチェロの副主題をまじえつつ、にぎやかな音楽がしばらく続く。第2主題はロ短調で行進曲風。展開部は冒頭の再現から始まり、
第1主題と副主題が主に用いられる。冒頭主題がファンファーレのかたちで戻ってくると、もうそこからは再現部だ。第2主題がト短調で再現された後、第1主題を素材とするコーダで曲は簡潔に閉じられる。
 第2楽章 アダージョ ハ短調 2/4拍子。変則的な三部形式。
 のどかさと厳かさをたたえた主部の後にユーモラスなハ長調のエピソードが続く。再び主部が現れ、今度は劇的な緊張感が高まるが、エピソードがまたこれに続く。
最後に主部の素材がもう一度回想され、曲は静かに終わる。
 第3楽章 アレグレット・グラチオーソ ト短調 3/8拍子。三部形式。
 慣例的なスケルツォのかわりに、ワルツが使われている。中間部の素材はドヴォルザーク自身のオペラ《頑固者達》と関連性があり、田園風の素朴な味わい。同じ中間部の素材はコーダでも2拍子のかたちで使われる。
 第4楽章 アレグロ・マ・ノン・トロッポ ト長調 2/4拍子。ソナタ形式の構成原理を取り込んだ変奏曲。
 変奏主題は冒頭のファンファーレや中間部の主題とモティーフの上で関連性を持つほか、第1楽章のフルート主題とも類似している。多彩な旋律が互いにうまく関連づけられた、ドヴォルザークならではの終曲。
 演奏は、チョン・ミョンフン指揮ウィーンフィル。しなやかで、ナイーブかつ華麗で、圧迫感がなく素晴らしい演奏。