クープラン:新しいコンセール第14番ニ短調
ー今週のテーマは、春の兆しno.2ー弥生・蟄虫啓戸(蟄虫が戸を啓く)
ー春先の雨の日にしっとりとしたクープランを。
 フランスの絶対主義時代に君臨した“太陽王”ルイ14世は大変な音楽好きでも知られた。栄華を極めた絶頂期には、ヴェルサイユ宮殿で毎夜の大祝典に明け暮れたが、
晩年は相次ぐ戦乱や不幸に苛まれ、傷心の王はプライヴェートで小規模な室内音楽会に心の慰めを見出すようになったという。
フランソワ・クープラン(1668-1733)は、そうしたルイ14世に仕えて深い信頼を得ており、自由な室内編成による器楽合奏曲“コンセール”を王はことのほか好んだ。
 王の没後、クープランが「より多くの人々に気に入られるならば」と考えて残したのが「新たなコンセール集」で、最高傑作の一つとされながら、演奏も録音も少なかった。
「国王の心に奉仕するために」書かれた音楽から、「後世の人々の心に奉仕するために」書かれた音楽へ。静かで、思慮深く、大声で主張せず、楚々(そそ)として聴き手のそばに控えていてくれる美しい花のようだ。無視することもできるし、問いかければ、含蓄(がんちく)をもった誠意ある答えが返ってくる、側近のような音楽。政争に疲れた晩年のルイ14世の心の逸楽もそうだったろう。
 曲は、荘重なプレリュード、生き生きとしたアルマンド、しっとりと落ち着いたサラバンド、そして小フーガの4つから成る。
 演奏は、クロアチア・バロック・アンサンブル。