モーツァルト:ピアノ・ソナタ第2番ヘ長調k.280
ー年末年始のテーマは希望。
ー年の初めはモーツァルトのイノベーション。第2楽章に注目!

あけましておめでとうございます。
明治維新150年、本年もよろしくお願いします。

ピアノ・ソナタ第2番は、チェンバロに代わってフォルテピアノが登場し始める頃の曲で、この楽器の連続的な強弱表現の可能性に対する大きな関心から生まれた。

この曲はハイドンの『Hob.XVI-23』がモデルとなった。 全体の構成もよく似ており、とりわけ第2楽章は、同じヘ短調で書かれているだけでなく、どちらも8分の6拍子、テンポはアダージョとなっている。 テーマもよく似ており、どちらも哀感がこもった美しいシチリアーノ風の旋律である。久元祐子 「モーツァルトのピアノ音楽研究」 音楽之友社 2008 pp.158-159

この第2楽章は後年の名作、イ長調KV488のピアノ協奏曲の第2楽章を思い起こさせる。 この第2楽章はアダージョで嬰ヘ短調、6/8拍子。 やはりシチリアーノ風の旋律が使われている。 モーツァルトが書いた最も美しいアダージョとされることが多いが、KV280の第2楽章は、19歳のモーツァルトがすでにこの美学を体現できていたことを示している。
久元祐子 「原典版で弾きたい! モーツァルトのピアノ・ソナタ」 アルテス 2013 p.161

モーツァルトの短調あるいは緩徐楽章によく現れる哀愁あふれた情感に心奪われる人が多いが、特にこのソナタのようにシチリアーノ風の旋律が使われているときはなおさらである。 このような作品がモーツァルトの手で書かれた背景には、やはり演奏楽器の革命的な変化とそれに伴う音楽表現の研究があったからである。
バロック音楽の時代には、古典派にみられるような漸強(クレッシェンド)、つまり弱奏(ピアノ)からすこしずつ音色をふやして強奏(フォルテ)にいたるとか、その逆の漸弱(ディミヌエンド)といった連続的な変化はない。 音楽は、強(フォルテ)と弱(ピアノ)との間を断続的に、あるいは断層的に移り変わる。
演奏者はこの2つの鍵盤を使いわけて、強と弱との対比を作りだすのであって、その中間のニュアンスというものは、この楽器には存在しない。 これを改良し、強も弱も、そして強奏(フォルテ)も漸弱(ディミヌエンド)も、奏者の意のままに連続的にひきこなせる楽器─名前もその機構にふさわしくピアノフォルテ、略してピアノが一般的にひろくうけいれられるようになったのは、バロック期をすぎて古典派の時代に入ったころ、18世紀後半のことであった。皆川達夫 「バロック音楽」 講談社現代新書 1972 pp.47-48

演奏は、スヴァトラフ・リヒテル。素晴らしいタッチと透明感。