モーツァルト:アダージョ ロ短調k.540
ー今週のテーマは、ハイドンとモーツァルトの秋。
ー今日は深い悲しみをたたえた純粋なモーツァルトのアダージョ。
「モーツァルトがかつて作曲したもののうちで最も完璧で、感覚的で、最も慰めのないもののひとつである。」
アルフレート・アインシュタインは、モーツァルトの中でも異彩を放つこの曲をこのように評した。
実はこの作品が作曲された背景はほとんど知られていない。頼りにしていた父の死が反映されているとも言われるが、発表するオペラは次々と大成功を収め、作曲家として充実していた時期で、特に精神的に逼迫していたわけでもない。にも関わらずこのような深遠な悲しみを感じさせる楽曲を生み出したことについて、アインシュタインは「別に目的もなくモーツァルトのペン先から流れ出し得たのだと、単純に言ってしまっていいのではないか? 」とも言っている。
当初は他の曲と組み合わせてソナタにする予定だったのを、経済的理由でとっさに出版社に売ってしまったとの説もある。
モーツァルトの全曲中、唯一のロ短調であるこの曲は、作曲された1788年に、姉に送った小品集のうちのひとつとも言われている。
演奏は、内田光子。